〜在宅医療の医療サービスの質と量は、入院治療と外来治療の間にある〜

これまで、治療が必要にもかかわらずなんらかの理由で通院が困難な方は入院をするしか医療を受ける方法はありませんでした。また、入院し積極的な治療を行ったものの病気を根治することはできなかった時、最後の時を家で過ごしたいと思っても、点滴やカテーテルの挿入などの医療的処置が常時必要な場合には、外来治療では対応することができず家で過ごすことはできませんでした。しかし、在宅医療の普及によって、これらの方々が住み慣れた家で治療を継続しながら生活を続けることが可能になります。

在宅医療で提供できる医療サービスの質と量は、入院治療と外来治療の中間とお考えください。在宅医療では、血液検査や点滴、酸素投与や人工呼吸器の管理などは可能ですが、CTやMRIなどの画像検査は行うことができません(最近はレントゲン検査はできるようになりました)。また、病気の状態を維持したり、症状を緩和する治療は病院と同等にできることが多いのですが、脳梗塞や心不全の治療など急性期の治療は病院での治療には劣ります。

 

 

在宅医療のメリット

  • 本人が住み慣れた自宅で過ごすことができる
  • いつでも家族や友人と過ごすことができる
  • 自由な生活を送ることができる(病状にもよります)
  • 医療費が入院より安く済む

在宅医療のデメリット

  • 家族の負担が入院よりは大きい
  • 本人だけでなく、家族や親族を含めた意思の統一が必要
  • 画像検査や病気を治すような積極的な治療は難しい
  • 緊急時の対応は、病院には劣る

 

入院治療と比較した在宅医療の最大のメリットは、住み慣れた場所で過ごせることです。「その人の人生の染み込んだ住み慣れた自宅で過ごせるということ」は、面会制限があり食事制限があり無機質な病院のベッドで過ごすよりも、何倍も有意義な時間を過ごせるのではないでしょうか。

 

しかし、一方でデメリットとしては介護者の負担が挙げられます。いくら本人が家での生活を望んだとしても、それを介護する家族がそれに同意し協力しなければ在宅医療は成り立ちません。この負担がどの程度のものか、不安に感じられるご家族も多いと思います。最近は様々な在宅医療・介護サービスが提供されており、これらを組み合わせることで、ずいぶんご家族の介護の負担を減らすことが可能となっており、場合によっては一人暮らしでの在宅医療・看取りも可能です。

 

また、急に何かあった時の対応について不安に思われる方も多いと思います。確かに、ナースコールを押して数分で看護師が来て対応してくれる病院や施設には敵わないのは事実ですが、在宅医療でも訪問看護師や訪問医師が24時間365日、電話や往診で対応してくれます(事前に確認が必要です)。また、在宅医療では、何かあった時の薬(例:痛みが出た時の痛み止め、吐き気が出た時の吐き気どめ)を予め処方されていることが多いので、多くの場合それらの薬を使ってご家族で対応することも可能です。もちろん、必要があれば、担当医を通して入院の手配もしてもらえます。

 

結局は「ご家族の協力」があり、「すぐに対応してもらえる安心感」よりも「自宅に居られる満足感」が大きい方にとって、在宅医療は大きな魅力になるのではないかと思われます。

 

<訪問診療で必要となる費用>

〜収入状況や重症度によって幅があるが、1割負担の場合、月に3,000円から8,000円程度〜

訪問診療の費用に関しては保険診療ですので、各種健康保険が適応となります。

費用のベースとなるのは、「訪問診療料」と「在宅時医学総合管理料または施設入居時等医学総合管理料」の2つです。

 

①訪問診療料:訪問診療1回分の料金です。診療所の体制や休日夜間帯によって、料金が異なります。
②-1 在宅時医学総合管理料:自宅で過ごしている場合の24時間365日対応するための健康管理料です。
②-2 施設入居時等医学総合管理料:施設で過ごしている場合の24時間365日対応するための健康管理料です。

 

初診時には状態把握の目的もあり、月に2回は定期訪問が必要となると考えると、お住まいの状況や収入によって金額は異なりますが、1割負担の方で3,000円から6,000円ほどとなります。

また、訪問診療において多くの場合はケアマネジャーに情報提供し医療介護連携を図ることから「居宅療養管理指導料」が必要となり、これに月に約500円がかかります。

 

<その他追加でかかる料金は>

〜臨時往診には一割負担で800円から4,000円がかかる〜

急な病状変化で臨時の往診が必要となった場合には、往診料が加算されます。これは、往診の時間帯や平日か休日かなどによって料金が変わりますが、1割負担の方で一回につき800円から4,000円程度です。

また、特定疾患や在宅酸素療法を行っているなど厚生労働省が別に定める状態にある方の場合は重症と判断され、さらに約1,000円が追加でかかります。

訪問診療では基本的に院外処方となるためお薬の代金は別になり、これは薬局に支払います。

訪問診療にかかる交通費や通信費に関しては、医療機関ごとに設定されていて、無料としているとことから実費を請求するところまであるようです。

 

施設にお住まいのほうが自宅にお住まいの方よりも安い費用となることが多く、その他諸々の訪問診療にかかる費用の合計は、臨時往診がなかった場合、施設の方で1割負担の場合月に3,000円から5,000円程度で、自宅の方は5,000円から8,000円程度がかかります。

 

この訪問診療にかかる費用を聞いて、どう感じられたでしょうか。高いと感じた方も、安いと感じた方もいらっしゃるかもしれません。一般の外来診療と比較すると数倍の費用がかかりますが、これは24時間対応する体制を作るためにかかる費用とお考えください。また、医療費には様々な助成や公費負担の制度があります。次項でこれをご紹介します。

在宅医療にかかるお金(全国在宅療養支援診療所連絡会)
http://www.zaitakuiryo.or.jp/zaitaku/money.html

 

<費用に関する様々な助成制度>

〜自立支援医療や指定難病の医療助成で、医療費の自己負担を抑えることができる〜

公費医療負担制度とは、病気の種類や所得などに応じて国や自治体が自己負担を助成してくれる制度です。前項でご紹介したように、とくに自宅において訪問診療を受ける際、自己負担が重くなりがちです。しかし、この助成制度を利用することで自己負担を抑えて在宅医療を受けることができる場合があります。

 

自立支援医療は、身体障害者および精神障害者を対象としたものです。医療費は原則1割負担となり、世帯の所得に応じて月の負担額に上限が設定されます。また、指定難病の医療助成では、306種類の指定難病の方が対象となります。原則医療費の2割負担(すでに自己負担が1割の方は1割)で、さらに指定難病の受給者証に記載されている病名に関する医療および介護の多くの部分に助成を受けて自己負担をなくすことができます。その他にも、小児慢性特定疾病の医療助成や結核、原爆に関する助成もあります。

 

また、生活保護を受給されている方の場合、医療費や介護費は原則扶助で全額負担されるため自己負担はありません。

 

身体障害者手帳をお持ちの場合も、その等級に合わせて助成を受けることができます。医療費の助成に関しては、自治体によって助成の範囲が異なりますが、身体障害者手帳1級と2級および3級の一部の方は重度心身障害者医療費助成制度の対象となり、医療費の大部分の自己負担が免除されます。

 

 

<高額療養費制度>

〜年齢と収入に応じて自己負担限度額が定められている〜

上記のような助成制度に当てはまらない方でも、家計の負担を軽減できるように一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。また、70歳以上の方は、この限度額が外来のみの上限(在宅医療も外来と同様に扱われます)があります。

  • 年収160万円以下の方は、月の自己負担上限が8,000円
  • 年収370万円以下の方は、月の自己負担上限が1万2,000円
  • 現役並みの収入がある方は、月の自己負担上限が4万4,400円

保険者から限度額適用認定証もしくは限度額適用・標準負担額減額認定証の交付を受け、医療機関の窓口で提示すれば、窓口での支払いを自己負担限度額内にとどめることが可能です。

外来費用に介護保険サービスの料金が合算されたものが、在宅療養にかかる費用となります。それぞれに上限額が設定されているだけでなく、医療費と介護保険費の合算の上限も設定されているので、適応になるのであれば申請をしておきましょう!

 

<看取りにかかる費用>

〜在宅での看取りには追加で費用がかかるものの、病院での看取りよりもはるかに安い〜

自宅で看取りを行った際にも追加で費用がかかる場合があります。

事前に看取りに関してきちんと説明を受け自宅で看取りを行った場合、医療機関の種類にもよりますが1割負担の方で3,000円から7,000円の費用がかかります。

また、自宅で看取りを行う場合の多くは、看取る前には臨時往診など診察が頻回となりがちです。この臨時往診の費用もそれぞれかかり、さらにターミナルケアの加算がついて1割の負担の方の場合3,000円が追加でかかります。

前述の訪問診療の基本費用と合わせると、月の医療費が10万円から18万円ほどとなり高額に感じられるかもしれませんが、病院における死亡1ヶ月前の平均医療費は112万円となっており(これは平成14年当時の額で、現在はさらに高額であると考えられます)、病院で亡くなるよりも家で亡くなる方が医療費は低く抑えられます。

もちろん、前項でご説明した高額療養費制度も適応されるため、限度額以上の支払いを求められることはありません。

 

 

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